手段と目的について、本当の「使う」という能力とは?!
「手段の目的化」という言葉があります。
「目的を達成するためにとった手段が、いつの間にか目的そのものになる」ことであり、概ね「そのことによって当初の目的を達成できない」ことも指します。
例を一つ挙げます。
学生時代、私の「ノートが汚い」と文句を言ってきた人がいました。
確かに彼女のノートは非常にきれいでした。
文字や数字は達筆で美しく、色とりどりのペンで色分けされてこれまた美しい、シールも貼られていましたし、ノート自体もお金のかかってそうな良いものでした。
しかし、肝心の彼女の成績は私よりも遥かに下でした。
というよりも、全体的に見ても彼女はそんなに優秀な方ではなく、中の中からちょっと下、といったところです。
もはや言うまでもないかもしれませんが、彼女は「ノートをきれいに書くこと」が目的と化し、本来の目的であったはずの「勉強して成績を上げる」というものを見失っていたわけですね。
(私のノートが汚いのは事実でしたが、ノートは本来自分が勉強する時に使うものですし、自分がわかればそれで良いじゃないかと。
もちろん「あまりにも汚すぎて成績が悪くなった」というのであれば、問題です)
この「手段の目的化」を確認する時、おすすめは「使う」という行為を考えてみることです。
今回は「LINE」というアプリを例に挙げてお話し致します(画像は公式Webサイトより)。
通信の機能に限って言えば、今はLINEを使っていない人はほとんどいないのではないのかと思われるぐらい、皆さんお使いのアプリです。
が、最初に使い始めた理由は何だったでしょうか。
まずはそのことを思い出してみてください。
ここでさらに「LINEを使う方法は?」と言うと、皆さんはどのように思われるでしょうか。
真っ先に「LINEというアプリの使い方」を思い浮かべる人がほとんではないかと思います。
これは「手段と目的」のうちの「手段」に相当します。
では、もう一つの「目的」の方で言えばどうでしょう。
このLINEというアプリは「コミュニケーションをとる」という目的のために使うものですよね。
つまり両方をまとめますと「コミュニケーションをとりたいという目的については、その手段の一つとしてLINEというアプリを使うという方法があるので、それを選択して使う」ということになります。
では、その前に何故「コミュニケーションをとる」という目的が発生したのでしょうか。
最近では、登録型の派遣スタッフへの連絡の際には電話やメールではなく、LINEを使うという会社が非常に多いそうですね。
この場合、登録した会社に言われて「LINEを使ってコミュニケーションをとらなければならない」という目的が発生しました。
しかしこの場合に当てはまる人は、比較的少ないのではなないでしょうか。
ほとんどの人は恐らく、友人や知人におすすめされたことがきっかけではないかと思います。
つまり目的は何かといいますと、すすめてくれたその友人知人も含めて「いろんな人とコミュニケーションをとりたい」というものだと思います。
さらに何故この目的があるのかと言いますと「いろんな人とコミュニケーションをとって、日々の生活を楽しくしたい」という目的があるからですけれども。
そこには「人生をもっと楽しみたい(=より幸せになりたい)」という最も大きな目的があるわけですね。
まとめると「より幸せになりたい→コミュニケーションをとりたい→LINEを使いたい(→使いこなしたい)」となるわけです。
それでは、ここで例として「LINEの機能を細かいところまで知っていて、使いこなせている人が二人いる」としましょう。
一人はその機能を使って、たくさんの人を知り十分なコミュニケーションをとることもできたとします。
その中で仲良くなった人から詐欺まがいの情報商材を売りつけられて、借金を抱えて不幸になったとしたら、どうでしょう。
もう一人は機能を使いこなすことはできても、コミュニケーション能力が低いため深い付き合いができなかったとします。
逆に他の人と比べて、皆と上手く付き合えないことで悩んで不幸な状態になったとしたら、どうでしょう。
つまり「LINEというアプリの機能を使う能力が高い」という人が、本来の「いろんな人とコミュニケーションをとって、日々の生活を楽しくしたい」という目的を果たせる人であるとは限りません。
そもそもアプリを使う能力以前に、そこそこの「コミュニケーション能力」が必要だからです。
本来は「コミュニケーション能力が高い人がLINEというアプリを使うことによって、さらに幸せな状態になることができる」というものです。
となりますとその逆に「既にたくさんの良い友人知人に囲まれて幸せだから、LINEを使う必要がない、だから使わない」という選択をして、そのままで幸せだという人もいるでしょう。
まとめますと以下です。
まずは最も大きな目的「幸せに生きる」を考えること。
その上で、手段である「使う」という行為を考えること。
と、同時に「使わない」という選択も合わせて考えること。
この三つを常に心に留めておくと、手段の目的化が起こりにくくなります。
その中でも最も範囲が広くてややこしい「使う」という行為について、今回は考えてみました。
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